はじめに
本シナリオは『クトゥルフ神話TRPG基本ルールブック第6版』(以下基本/基本ルルブ)、『マレウス・モンストロルム』(以下マレモン)、『キーパーコンパニオン改訂新版』(以下KC)を参考に作製されたものですが、KP・PL共に基本ルルブのみでプレイすることが可能です。
本シナリオはヴォルヴァドスの神官になって怪異から地球を守るという、愛と真実の悪を貫く物語です。頭を溶かしてRPすると楽しいものと思われます。推奨技能は戦闘技能で、舞台に関しては現代日本を想定しているが、改変次第でどこでもよい。想定時間は30分から1時間程度。
背景
UMA研究者である宇摩悠馬(うまゆうま)という男がグリーンランドでルリム・シャイコースの赤い氷に魅せられ、故郷で召喚したことが発端となる(男は召喚時に絶命)。このことを察知したヴォルヴァドスは神官たちに信託を授け、神官たちのいるこの惑星を守ろうとする。
エネミー
ルリム・シャイコース(マレモンp257)
STR:25 CON:65 SIZ:25 INT:18 POW:20 DEX:12 移動:10 耐久力:45 db:2d6
武器:丸のみ 75% ダメージは死
装甲:10ポイントのぶよぶよした肉。突き刺すあるいは切り裂く攻撃による傷は、毎ラウンド1d10ポイントの火傷によるダメージを与える血を噴出させる結果をもたらす。この腐食性の血は、水で洗い流せる。
呪文:あらゆる《接触》と《招来》の呪文。加えてキーパーが望む呪文すべて。
正気度喪失:1d4/2d8
シナリオ本文
神官たちはいつも通り朝の日課を行う。
神官たちのうちの誰かが呪文《炎に声を与える》を使用する。
『炎に声を与える』
使い手は1d6正気度ポイントと1POWをコストとして支払わなければならない。この呪文は少なくともSIZ10(人間の大きさ)の炎を焦点として必要とする。呪文が掛けられている間、炎は絶えず燃えていなければならない。呪文が成功すると、炎に神が降臨し、信託を授けてくれる。
※KCp88改変
※灯油の染み込んだ大きな木像は準備されている
あなたは火を焚き、呪文をかける。燃えさかる炎の中に、奇妙なくぼみや不思議な曲線や平面で構成された、人類とは異なる配置の、おぼろげな貌が映る。その焔から、ちりんちりんとした細い水晶の鳴るような声が聞こえる。
信託
「汝らに信託を授ける。ここより北にありし常命の者どもの集いにて、赤き雪が降り続いている。今この時を遺棄すれば赤き雪は惑星全域に降り注がん。横暴たる寒気は常命の者どもを凍りつかせる。我が神官たちよ彼の地に赴きこの星の守り手とならん。」
意訳
「北の村で赤い雪が降っている。これを放置すると地球全土に赤い雪が降り注ぐ恐れがある。君たちにはそれを防いでもらいたい。それとめっちゃ寒いから防寒対策はちゃんとしてね。」
神官たちは北の村に赴く。たしかに赤い雪が降っており、氷点下はくだらないだろうという冷気があなたたちを襲う【CON*5】(防寒着を着用時【CON*7】)に失敗すると耐久値-1およびCON-1。
すると程なくして村の外に出ていこうとする村人を発見する。
村人「おめさんがたこの村に何の用だ。この村は赤い雪が降ってからめっきり寒くなっちまって生活もままならねぇ。わりごた言わね、はよこごがらででったほさいぃ。」
そこまで話すと「ん、おらもが?!うそだべさ?!」と叫び声を上げる。見ると村人の足元が赤い氷に覆われ始めている。その氷は急速に成長し村人の頭まで完全に包み込んでしまった。正気度喪失0/1d3。
辺りを見渡すと他にも氷漬けになった人々や壁が氷に覆われた家々が見て取れる。【目星】で一際大きな氷の城とでも呼べそうなほどに凍り付いた一軒の家を発見する。失敗した場合はヴォルヴァドスの信託(ヒント)を授かる必要がある。
※本シナリオ中は技能の代用として1d4のMPを支払うことでシナリオ進行におけるヒント(信託)を授かることができる。
氷の城に入ろうにも頑丈な氷で覆われていてそうたやすく入れそうではない。任意の【戦闘技能】で10点の耐久値を削れは氷を破壊して中に入ることができる。失敗した場合はヴォルヴァドスが溶かしてくれる(要MP1d4)。
1F
書斎に日記がある
●日記
1.
研究の為にグリーンランドへと向かった。何故向かうのか、未知なる巨大生物の目撃証言があったためである。UMAの研究を主としている私としては行かない理由がなかった。
2.
なんだあれは巨大な白い蛇のような、蛆のような、確かに見たことのない生物だった。興奮と恐怖のあまり写真に収めることはできなかったが、命があるだけ儲けものといったところだろうか。しかしあれは、なんと美しい光景だっただろうか。赤い氷の柱がその白蛆によって形成されていた。あれを自分の故郷でも再現できないだろうか。
3.
これだ、ついに見つけた、この魔道書があればアレを呼ぶことができるついにきたぞ、私の家がイイーキルスとなる日が!
いあ!いあ!ルリム・シャイコース!
【目星】で地下室への入り口を見つける
B1F
中は広い洞窟のような空間だった。そこに一人の男が本を持った状態で氷漬けになっていた。あなた方がそれに近づくと地面が揺れる。何かがせり上がってきた。それは、白く巨大な蛆のような姿をしていた。胴体の幅は軽く1mをこえているだろう。体長およそ10m程の巨大な蛆があなた方に襲い掛かる。正気度喪失1d4/2d8。
最終戦闘
あなた方の脳内に直接声が響く。
「汝らの力のみでは、彼の白蛆に傷をつけること能わず。使命達成の為、我が炎の加護を常命の神官たちに与えるものとする。」
あなた方の身体は優しい炎に包まれる。力がみなぎる。
ヴォルヴァドスの加護により装甲5点&装甲無視攻撃獲得
ルリム・シャイコースに飲み込まれた探索者は内部からルリム・シャイコースを攻撃することが可能。1d3のダメージ(装甲貫通)を受けつつ攻撃可能。
戦闘の終了条件はルリム・シャイコースの耐久値を0以下にするか、退散させることである。
退散させるためにはまず1Rかけて本を持った男の氷を溶かし、1Rかけて「ルリム・シャイコースの招来/退散」を習得し、呪文を詠唱することが必要である。このプロセスをこなせば退散可能である。MPおよび対象とのPOW対抗はヴォルヴァドスが肩代わりしてくれるためロール不要。
END
こうしてあなた方ヴォルヴァドスの神官たちは、宇宙的恐怖からこの星を救ったのである。さあ、ヴォルヴァドスの神官たちよ、これからも世界の平和を守るため、愛と真実の悪を貫け!
あとがき
本シナリオを書くにあたって、狂信者バトルものがしたいと言ってくれた当サークルの鈴木さん、ルリム・シャイコースと赤い雪の案をくださった遊刻舎のてこさん、本当にありがとうございました。