はじめに
本シナリオは『クトゥルフ神話TRPG基本ルールブック第6版』(以下基本/基本ルルブ)、『マレウス・モンストロルム』(以下マレモン)、『キーパーコンパニオン改訂新版』(以下KC)を参考に作製されたものですが、KP・PL共に基本ルルブのみでプレイすることが可能です。
また、本シナリオは適宜改変をしながら進めていくことを推奨します。「探索者をシナリオの軌道に導く」というよりは、「本シナリオに掲載されている情報を参考に探索者がやろうとしていることに向けてKPとPL共同で道をつくっていく」イメージです。
シナリオ概要
探索者は依頼として、あるいは友人として「浦手勝也」から「山吹彩愛」を探してほしいと頼まれる。しかし、それは純粋なヒト探しではなかった――
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舞台
現代日本シティ、三浦区(架空の街)
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三浦区
半島。東側は浜、西と南は漁港。小学校から大学まで教育機関は一通り揃っている
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所要時間
5時間程度
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PL人数
3〜5人
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推奨技能
・人を探すことができる技能
・不測の事態に対応できる技能
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こんな方向け
・オーソドックスなシティ探索がしたい
・一本道じゃないシナリオがしたい
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事件の解決方法
・「寵愛を受けしもの」を無力化する
・「昏海の会」を無力化する
・山吹彩愛、夢国創世、山吹大地(寵愛の子)を新たな潜伏先へ連れて行く
事件の背景
深きものと通じている「昏海の会」は混血種を積極的に産ませていて、「クトゥルフの寵愛を受けしもの」を孕ませようとしていた。寵愛を受けしものは深きものから神聖な存在として崇められることから、それを授かれば、よりクトゥルフに近づくことができると考えたからである。
やがて混血種を孕んだ女性の内の1人、山吹彩愛の診断結果(教団に通じた医師が診たものとする)に寵愛を受けしものの兆候がみられた。しかし、山吹はクトゥルフに近づくための道具としてではなく、自分の子として育てたいという思いが強くなっていく。故に夜逃げにも似た形で病院を飛び出した。逃亡先を求めた山吹は、以前より自分の店にあった広告を頼りに夢国研究所を訪れる。ある人体実験の被験体を募集しているとのことだったが、彼女はそれ以上に実験の都合上、宿が確保されることと個人情報が保護されることに希望を見出した。知人の家では足がつくかもしれないと思った彼女はこの話に飛び込んだ。
しかし待っていたのはショゴスと人間の融合実験であった。母体への影響は則ち胎児への影響であるというのは想像に難くない。しかし、この街を出ると協力を要請されていると思われる友好団体の「銀の黄昏」が自分を探しているかもしれないと考えた。そのため、遠くへ逃げるよりはまだ比較的小さい昏海の会が捜索している三浦区で潜んでいた方がよいと判断し、被験体となることを決意した。この時ばかりはお腹の子が受けた寵愛がこの子を守ってくれると都合よく信じるしかなかった。
山吹は順調にショゴスと融合し、流れる血と筋肉等の組織がショゴスに侵食された。無論胎児も。程なくして出産を迎える。産まれた赤ん坊は、正しく怪物であった。顔や腕から生えた触手にいくつもの牙を有した口があり、それが背中から生えた蝙蝠の羽根や脚に生えたヒレを食べている。しかし、食い千切られた先から羽根やヒレは再生していた。別の場所からヒレや羽根、鱗が生えることも多々あった。怪物は自分自身で破壊と創造を完結していた。
それでも怪物の母は我が子を愛した。幸か不幸か、怪物が母を食らうこともあったがショゴスと融合したため肉体の再生は追いつき、かろうじて子育てじみた行動ができた。
夢国はショゴスと人体の融合に関する実験情報が得られればそれでよかったが、予想だにしない生物を目の当たりにし、これにも興味をもった。そこで、「当初の実験は終わったがその子の生態を研究したい。そのかわり不自由のないように宿等はこれからも継続して用意する。」と持ちかけた。山吹も自分の子として育てたいと決意したものの、どのようにしたら良いのか具体的な方法があった訳ではなかった。未知すぎる子育てにサポーターがついたような気持ちさえした彼女は、一定の安全も保障されていることも加味し研究を了承した。相互の利害一致により、世にも奇妙な家庭が誕生したのだった。
一方、逃げられた教団側は彼女を探そうと躍起になっている。警察に届出を出すわけにもいかず、総出で探し回っているが埒が明かず外部に依頼するようになる。そんな依頼を受けた者の一部が今回の探索者である。
登場人物
山吹 彩愛(やまぶき あやめ)
深きものの血を1/8受け継いでいる。生まれてすぐに母親は離れ、父親に男手ひとつで育てられた。
山吹は自分が混血種であることを知らないし兆候もまだない。関連するものを挙げるならば、泳ぎが得意ということくらいである。しかし血には逆らえなかったのか、大学時代にクトゥルフを夢で見ることになる。夢の話をサークルの飲み会で打ち明けた際にいたのが浦手である。この話を聞いた浦手が「夢に出た存在の正体について教える」と、山吹を教団に引き込んだ。
教団でも夢を見る者は素質のある者、信者になるべくしてなった者といった扱いで、深きものの血を受け継いでいる証拠として考えられてはいない。そのため、教団も山吹が混血種であることに気付いていない。「クトゥルフの寵愛を受けしもの」を授かったのは偶然ではなく、素質を持ち合わせていたためかもしれない。
その後、夢国研究所でショゴスと融合してから子どもを産む。
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性別:女性 年齢:24
職業:喫茶店「MOONBOOKS」店長
STR:14 CON:30 POW:16 DEX:11
APP:12 SIZ:10 INT:13 EDU:14
HP:20 MP:16 SAN:53
アイデア:65 知識:70
db:なし 装甲:1ラウンドあたり1d10の回復
クトゥルフ神話:8%
<技能>
水泳:95%/経理:50%/聞き耳:50%
信用:70%/コンピュータ:50%
製作(料理):70%/操縦(船舶):60%
<持ち物>
・家の鍵
・船のエンジンキー
夢国 創世(ゆめくに そうせい)
「1に生存2に研究3、4が理想で5に利益」というような価値観の持ち主。かねてよりオリジナルの生命体を創造したいと考えていたが、ひょんなことからSIZ1程度のショゴスを手に入れ、これを元に何かつくれないだろうかと研究を始めた。山吹のことを「おい」とか「おまえ」などと呼んでおり、名前は興味がないので覚えていないし聞いてもいない。
ヘビースモーカーだったが、山吹が来てからは被験者に余計な影響を与えて必要なデータが得られなくなる可能性を危惧して禁煙している。
院長にかなり無理やりな説得を通して研究所をこしらえたので大学病院の医師たちから嫌われているが、本人は興味がない。
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性別:男性 年齢:37
職業:憶曇大学病院所属の准教授
STR:13 CON:8 POW:12 DEX:12
APP:10 SIZ:15 INT:17 EDU:19
HP:12 MP:12+4 SAN:38
アイデア:85 知識:95
db:+1d4
クトゥルフ神話:15%
<技能>
精神分析:70%/図書館:70%/説得:70%
英語:70%/ラテン語:50%/梵語:30%
医学:70%/化学:70%/生物学:70%
薬学:40%
<持ち物>
ユゴスよりの白衣
→AF:MPを4ポイント保持している
<呪文>
被害をそらす(基本p278)
山吹 大地(やまぶき だいち)
クトゥルフの寵愛を受けしものとショゴスのキメラのような形で産まれた子どもである。ショゴスは夢国によって組み込まれたわけではなく、母体から血液を通して受け継がれたもの。山吹彩愛を母親だと認識しているとうかがえる行動はあるらしい。
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性別:男の子 年齢:生後6ヶ月
職業:神話生物
STR:29 CON:31 POW:17 DEX:4
APP:× SIZ:4 INT:2 EDU:×
HP:18 MP:17 SAN:×
アイデア:10
db:+1d6 装甲:1 回復力:4
<技能>
触肢:20% ダメージ 1d3
<成長時のステータス>
STR:+10 SIZ:20 DEX+10 DB:3d6
HP:28 装甲:3 回復力:4d3
<成長時の技能>
かぎ爪:80% ダメージ 1d6+db
噛みつき:75% ダメージ 1d8+db
<成長時の呪文>
忘却の波(基本p281)
山吹 灯軌(やまぶき ともき)
彩愛が20歳の時に他界した彩愛の父。漁師であり、個人の漁船を所持していた。娘とともに漁に出ることもあり、その際は操縦や釣りの指導をしていた。
死後、船は形見のような存在として娘に渡った。遺書には困ったら売って金にしてくれとも記されていた。船の名前は深丸(ふかまる)。
彼は彩愛が世界水泳で金メダルを獲得した報せを聞いた後、船で沖に出かけ妻を一目見ようとしたのだが、そのまま深きものに海の底に引きずり込まれてしまった。その深きものが妻だったものかどうかは定かではない。
山吹 水萌(やまぶき みなも)
深きものの混血種のクォーターである。彩愛を生んだ数か月後から混血種としての兆候が見られた。通常の混血種は10代のうちに変化がみられるが、クォーターであり深きものの血が薄くなっていたため変化が遅かったのだろう。この子には普通の子として生きてほしいと願い、醜い姿をした自分は離れた方が良いだろうと行方をくらました。今もなお三浦区近海に生息しているかもしれない。
性別:女性 年齢:24(行方不明当時)
職業:水泳選手
三浦 厚信(みうらあつのぶ)
神一筋25年。クトゥルフに近づこうと日々祈りを捧げている、昏海の会代表。仲間は多い方がよいということで銀の黄昏という規模の大きな教団ともパイプを持った。いつでも新たな教徒を歓迎している。
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性別:男性 年齢:45
職業:三浦区探偵事務所代表
STR:10 CON:13 POW:17 DEX:8
APP:10 SIZ:12 INT:12 EDU:18
HP:13 MP:17 SAN:56
アイデア:60 知識:80
db:なし
クトゥルフ神話:20%
<技能>
図書館:60%/英語:50%/中国語:40%
オカルト:60%/経理:40%
歴史:40%/天文学:30%
<持ち物>
山吹家のスペアキー
<呪文>
深きものとの接触(基本p269)
忘却の波(基本p281)
浦手 勝也(うらで かつや)
昏海の会の一人。探索者に山吹彩愛の捜索を依頼する。言動が少し軽いかつうっかりぽろりと他言無用のことを言ってしまいかねない。「頭空っぽの方が夢詰め込めるだろ!」と真顔で真面目に言ってくるタイプ。ぽんこつ頭脳。
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性別:男性 年齢:26
職業:ペリットカントリー運送の社員
STR:17 CON:14 POW:9 DEX:12
APP:13 SIZ:16 INT:9 EDU:10
HP:15 MP:9 SAN:37
アイデア:45 知識:50
db:+1d6
クトゥルフ神話:1%
<技能>
運転:60%/機械修理:60%/こぶし:70%
キック:55%/マーシャルアーツ:40%
中宮 美深(なかみや みふか)
山吹の同僚であり、大学時代からの友人。山吹の父が亡くなってからは、山吹の寂しさを紛らわすためによく家に泊まりで遊びに行っており、今でも合鍵を持っている。喫茶店は山吹と二人で貸店舗を改装して開業したものであるが、資金に関しては中宮が「山吹の父の船は形見として大事にしてほしい」と言い、自分が高校時代からバイト等で貯めていた約1200万円を使用した。
というのが表の顔で、裏の顔はこの街に存在する唯一の銀の黄昏教団の人間である。このことは銀の黄昏の一部の人間しか知らず、山吹も昏海の会の人間たちも知らない。彼女の役割は昏海の会の動向を監視することと、この街での情報収集である。銀の黄昏は昏海の会が役に立つのか訝しんでいる節があり、今回の山吹失踪という昏海の会が引き起こした騒動を自分たちで解決できないなら関係を断つことにしている(このことを昏海の会は知らない)。その力量があるかを見るため、中宮は山吹の家の鍵を持っているが入って調べることも昏海の会への協力もしていない。そして半年経ち、そろそろ潮時と思い銀の黄昏側も動こうかという時期が、本シナリオの開始日と重なる。
しかし中宮は探索者と接触した日の仕事が終わった後、山吹の家の鍵をとりに帰って車を降りたところで物体Xに殺される。以後探索者と接触するのは物体Xがコピーした姿である。記憶も何もかも吸収し模倣しているので探索者がおのずと気付くことはないだろう。
また、シナリオ中に呪文を使うことは特にない。
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性別:女性 年齢:24
職業:喫茶店店長代理
STR:10 CON:11 POW:10 DEX:10
APP:16 SIZ:17 INT:12 EDU:14
HP:14 MP:10 SAN:43
アイデア:60 知識:70
db:+1d4
クトゥルフ神話:26%
<技能>
経理:70%/聞き耳:50%/追跡:60%
心理学:80%/運転(自動車):50%
製作(料理):50%
<呪文>
記憶を曇らせる(基本p255)
さまよう魂(基本p258)
物体X(マレモンp103)
シナリオ開始日の午前3時頃に発見された、浜辺に打ち上げられた潜水艦の様なものの中にいた。第一発見者(SIZ13)を食べ終わると分裂し、一方は海に潜み、一方は食べた人物の姿になり変わる。その後人間の姿をした物体Xは中宮の元へと近づいていく。中宮を取り込んだ後も分裂して中宮の姿をした物体Xと、第一発見者の姿をした物体Xに分かれる。
物体Xは狡猾で本来ならば人が多い中で戦闘など仕掛けないだろうが、地球に来て間もない個体であるということと、既に別個体は遠くへ移動しているため、彼にとっては地球人の強さを測るよい機会であるし、かぎ爪や触肢など元の姿で触れさえすれば感染させることも可能なので実験的意味合いが強い。
物体Xは食事をSIZ1分取る度にSTR、SIZ、CONが1ずつ増加する。有機生命体をつくりだすとき、STR、SIZ、CONは能力値を分割することになる。INT、DEX、POWは分裂したどの個体もオリジナルと同じ値をとる。
本シナリオでは物体Xよりショゴスが優位である設定しており、山吹は感染しないし、物体Xの体内にショゴスの一部が存在する場合はその影響を受ける。
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<オリジナル>
STR:20 CON:16 POW:14 DEX:20
APP:× SIZ:13 INT:19 EDU:×
HP:15 MP:14 SAN:×
アイデア:95 知識:×
db:+1d6 装甲:後述
<第一発見者を模倣した個体>
STR:16 CON:15 POW:14 DEX:20
APP:(8) SIZ:13 INT:19 EDU:(7)
HP:14 MP:14 SAN:×
アイデア:95 知識:(35)
db:+1d4 装甲:後述
<中宮を模倣した個体>
(本シナリオ中に登場する可能性がある個体)
STR:17 CON:17 POW:14 DEX:20
APP:(16) SIZ:17 INT:19 EDU:(14)
HP:17 MP:14 SAN:×
アイデア:95 知識:(70)
db:+1d6 装甲:後述
※かっこ内は模倣している状態のステータス
<技能>
消化した犠牲者を模倣する:99%
テレパシーで心を読む:99%
隠れる:50%/忍び歩き:50%
かぎ爪:50%/ダメージ1d8+db+感染
触肢:60%/犠牲者をSTR対STRの抵抗ロールで抑えつける+感染
口:40%/ダメージ3d6+感染
<感染>
物体Xに接触した者は【幸運】ロールを行い、失敗すると物体Xに感染する。次の3d6分の間に、犠牲者は異性種族に食われ、その体に変身して新たな物体Xとなる。
<装甲>
擬態した生き物に準ずる。ただし死亡するまで1ラウンド1ポイントの再生。生来の姿では2ポイントの装甲を持つ。火、電気、酸、魔術的な武器による負傷は再生できないし、新たな物体Xを生み出すこともない。
導入
探索者の元に浦手が「手を貸して欲しい」と連絡をよこし、「近々会えないか。人手が欲しい」といったことを告げる。人探しを手伝って欲しい等簡単な内容はここで伝えても構わない。詳しい話を今度するからということで探索者は集まることになる。浦手は手当たり次第に友人に連絡を入れており、この呼びかけに応じた人物が今回の探索者ということになる。この時、探索者の中に探偵がいる場合浦手は依頼として事務所に赴くことにしてもよい。
適当な喫茶店かファミレス等、もしくは探偵事務所で浦手からことの詳細を聞かされる。提示される内容は以下の通りである。
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浦手の友人である山吹が行方不明になった
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山吹の捜索を手伝って欲しい
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山吹とは大学時代からの友人
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行方不明になってから半年以上が経っている
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【知識】か【アイデア】で半年前にそのような名前の人物が行方不明になったというニュースがあったなと思い出す。
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山吹は出産間近で入院していたが、ある朝看護師が訪れると姿が無かった
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山吹の顔写真ももらえる
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スマホは病室に置きっ放しであったため連絡が取れない(今は警察の管理下)
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警察には行方不明になってすぐに届け出を出した(本人はしていないが病院側がした)
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山吹は大学近くの喫茶店「MOONBOOKS」で働いていた。
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山吹の家の場所は知っているが、鍵は持ってない。
※KP情報
山吹家の鍵も持っていない(三浦たちと踏み入ったことは言わない)、旦那も知らない(言えない)で浦手が開示できる情報が半年必死に探している割に少なく、怪しまれてもおかしくないので怪しまれて問題ない。探索者に怪しまれて詰められると前金を押し付けるように渡して逃げるようにその場を去る。
依頼を受けると浦手は他の人にも手伝ってもらえないか声かけてくるからということで探索者の元を去り、これから探索開始となる。導入終了時点での時刻は13時頃
浦手と別れた後は昼の行動から始めてよい。PLから提案があった場合、【追跡】あるいは【隠れる】&【忍び歩き】の複合ロールで浦手の尾行が可能である。
>浦手の部屋へ
過去の情報とハッキング
探索者が何か特定の情報をハッキングで調べたいと宣言した場合は【コンピュータ】で情報が出る。予めどの程度の情報なら出るかここに記す。クリアには不要であり、背景としての要素が強いので特に無理して出す必要はない。また各情報は探索者の中に対応する施設の関係者がいれば他の職員に聞いたり資料を探したり、時間をかけるか何かしらの判定を成功させれば入手可能となるだろう。
<戸籍(区役所)>
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山吹彩愛の旦那の情報はない
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山吹水萌は24年前に行方不明
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山吹灯軌は4年前に死亡
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浦手の住所(ハイツ後光101)
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山吹の住所(住宅街の一軒家)
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中宮の住所(エイリ庵203)
<事件(警察署)>
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山吹彩愛のスマホから居場所を特定できる情報は出なかった
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彩愛のスマホには複数の男性から出産を祝う内容、中宮から気遣われる内容の連絡が多く来ていた
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彩愛の目撃情報は病院から出た後全くない
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山吹水萌の行方不明に関して、山吹灯軌は届出するが熱心な様子はなかった
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灯軌は溺死扱い。漁に出ていた際の事故として処理される
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灯軌の遺体は引き上げられていない
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今朝、浜から引き揚げられた謎の潜水艦を保管しているが何もかもわからない
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→実際に見たうえで【クトゥルフ神話技能】に成功した場合、この潜水艦が宇宙から来たものではないかと直感する。
<大学病院>
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夢国は3年前から自分の研究所を持っており、病院勤務を免除されている
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夢国に対して予算がかなり割かれている
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監視カメラの映像を見るに山吹は一人で出て行った
<新聞社>
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24年前の山吹水萌失踪事件と今回の山吹彩愛失踪事件を紐付けする記事を作製中
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「妻は用済み?!動かない夫」(24年前のバックナンバー)
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「突然の船出、真相は海の底へ…」(4年前のバックナンバー)
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「病院から突然の失踪、セキュリティの甘さ」(半年前のバックナンバー)
以下は新聞社へのハッキング以外にも図書館で雑誌を探したり、ネットで検索したりという行動による【図書館】判定でも開示が可能である。
●「妻は用済み?!動かない夫」概要
元水泳選手の山吹水萌さん(24)が突然の失踪で足取りが全くつかめない。最後の目撃者は夫の山吹灯軌さん(26)。娘のあやめちゃん(0)と共に港へ散歩していた帰り、気が付くと水萌さんは姿を消していたとのこと。あやめちゃんは灯軌さんが背負っていたため無事だった。なぜいなくなったことに灯軌さんは気づかなかったのか、この時あやめちゃんを背負っていたのが灯軌さんだったのは偶然だったのか。さらに灯軌さんは警察に失踪届を出すもののそれっきり警察へ顔を出すことはなかった。不自然な失踪と夫の動向から、子どもが手に入ったことで妻が用済みになり自ら海へ突き落したのではないかと考えることができる。夫はこれに関して一切のコメントを拒否。あやめちゃんの安否が心配である。
●「突然の船出、真相は海の底へ…」概要
山吹灯軌さん(46)が漁の予定がない夜に船を出した。気付いた数名の漁業関係者が不審に思い後追ってみると、山吹さんの漁船こそあったが人は乗っていなかった。漁業関係者は辺りを警察に通報し捜索するも山吹さんは見つからなかった。漁業関係者の中には漁船から海に落ちていく人影を見たと証言している者もおり、警察は何らかの原因で山吹さんが船から落ちて溺死した事故として処理した。なぜ突然沖に出ようと思ったのか、何が原因で海に落ちたのか、どうして遺体は上がってこないのか、山吹さんの遺体とともに真相は海の底へと沈んでしまった。
●「病院から突然の失踪、セキュリティの甘さ」概要
先日、元水泳選手の山吹彩愛さん(24)が突然病院から姿を消した。彼女は妊娠10ヶ月を越えており、出産を間近に控えていた。そんな状態だったにも関わらず、彼女はどこへ行ってしまったのか。病院の監視カメラを見るに、攫われた形跡はなく自分の足で歩いていたとのこと。身重の体で遠くへは行けないはずだが、目撃情報はない。彼女に何があったのか、母子ともに無事なのかといった心配もそうだが、これを機に病院の管理体制にメスが入ることは確定事項だろう。
喫茶店「MOONBOOKS」
大学前にある喫茶店。大学生をターゲットにしているためか、店の外観と入ってすぐの窓付近の席はカジュアルで入りやすさを意識しているように見受けられる。奥の方は個室に近いような空間が作られており、音もある程度遮断できるつくりになっている。いわゆる落ち着いたオシャレ空間というやつだ。だが、それをぶち壊す広告が1つある。
◆広告
★被験者募集★
新たな生命に生まれ変わりませんか?本当の意味で代えのきかない唯一の存在、オリジナルへ。
つい最近発見された未知なる細胞をあなたの身体に埋め込みます。ラットでの融合は確認しておりますので最低限の命の保障はされています。ご安心ください。
<待遇>
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月200万円の報酬
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最低1年間は研究所内で拘束
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個人情報等が外部に漏れることはない
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電話番号:080-××××-××××
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憶曇大学医学部・医歯学総合研究科・遺伝子研究分野:夢国創世
※KP情報
電話しても適当な対応で「来るなら来てくれ。三浦区のその辺の港の近くだ」とざっくりとした場所を教える程度である。該当箇所をしらみつぶしに調べる場合は4時間程度かかって辿り着く。「夢国研究所」等での検索では登録されていないのでみつからない。マップアプリや地図等とにらめっこして目星をつける場合は【ナビゲート】もしくは【目星/2】で2~3時間でたどり着くことが可能。
「憶曇大学付属病院医歯学総合研究科未来遺伝子専門研究事業所」で検索したら出るかもしれないくらい。
◆店員に話を聞く
中宮美深が店長代理として勤めており、中宮が山吹の様子を教えてくれる。山吹は妊娠してから産休に入るまで少しの間働いていた。その時の様子としては、最初子ども授かったことを非常に喜んでいたが、産休に入る頃には思い詰めた表情をすることが出てきていた。中宮はマタニティーブルーの様なものかと思っていた。
探索者が山吹を探している旨を中宮に伝えると、自分が山吹の部屋の鍵を持っていると話し、仕事が終わったら一度家に帰って鍵を取ってきて探索者と共に山吹を探すと同行を申し出る。自分の住所は行方不明に関係がないので教えてはくれない。
広告の話を聞くと、産休に入るまでの勤務中よく見ていたと答える。広告が貼られた当初は誰が行くのかとあきれていたけど、妊娠してからはしげしげと見ることが増えていた。
※中宮の住所を何らかの方法で入手し、中宮の仕事が終わるのを待たずに山吹家の鍵を入手したい場合は【鍵開け】【目星】が必要である。ただし犯行中その場にいた全員に【幸運】判定を行い、一人でも失敗した場合は近隣住民に通報される。また、鍵が盗られたことに気付いた中宮があなた方を探しに行くのは想像に難くない。おそらくその日のうちに山吹の家と夢国研究所には向かうだろう。そしてその時の中宮は既に物体Xである。
話を一通り聞き終わり、探索者が病院を出ようとした際に【目星】か【聞き耳】で判定をする。成功すると店内に設置されてあるテレビに映るニュースを見る。
●ニュース
今朝、三浦区内の浜に謎の大きな鉛の塊が打ち上げられていた。中は空洞の部分があり、人ひとり入れる潜水艦の様相を示していた。しかし早朝のランニング中に発見したという第一発見者は、人を見かけてはいないらしい。現在は警察が回収し、調査をしている。
山吹の家
港から程近い一軒家。玄関のカギを開けて中に入ると、中は酷く荒れているのがわかる。玄関は靴棚から飛び出た靴で埋め尽くされている。リビングとキッチンはでは液晶の割れたテレビが転がり、床はぶちまけられた書類やCD類、食器類が占領し、冷蔵庫がコンロに突っ込むように倒れている。
◆彩愛の部屋
他の部屋よりも更に激しく荒れていた。クローゼットの中身は全てぶちまけられていて、引き裂かれている。無事な衣服はおそらく1つもないだろう。机は倒され、ベッドは元あったであろう位置から動かされ、ばねがむき出しになっている。カーペットは役割を放棄し、衣服だったものや机から外された引出しなどを巻き込んでぐちゃぐちゃによじれている。棚は破壊され、本などを下敷きに倒れている。壁紙もカーテンも力ずくで引きちぎられていた。この荒らされ方にあなたがたは憎悪を感じるだろう。
部屋に【目星】で埋もれていた手帳を見つける
●手帳
あんまりだよ……せっかく、お母さんと同じ舞台で、同じ結果を出して、お父さんに喜んでもらえると思ったのに……お母さんがいなくても寂しくないよって、私がいるよって、言えると思ったのに……どうして……。
美深がよく遊びに来てくれるようになった。大学にいる時以外はずっとバイトして将来の為に今からお金貯めているって言っていたのに、気遣わせてごめんね。でもありがとう。私もちょっとずつ前向いていこう。何かしていた方がいいだろうし、私もバイトしようかな。水泳は……いろいろ思い出しちゃうだろうし。
お店を始めるにあたってお父さんの船を手放す覚悟はあったけど、美深が何とかしてくれた。本当に申し訳ない思いでいっぱいだったけど、お父さんの形見を手放さなくてよかった…まだ持ってていいんだ。ありがとう。
初めての子ども、すごく嬉しい。私が一番に…ありがとうございます。
やっぱり、うーん…渡したくはない。ただただ平和に暮らしたい…。皆には悪いけど、今更かもしれないけど、やっぱり間違ってる。でもどうしたらいいんだろう。
やっぱり、これしかないのかな…?外はもっとだめだろうし。もうすぐ入院、決めきれない。私が無事だったとしてもこの子はどうなるの?この子がいなくなったら私、それこそどうしていいかわからない!
やっぱりこれしかない。お願い、生きて……!
---次のページが1枚だけ破られている---
※KP情報
破られた1枚は家と病院からそれぞれ夢国研究所に向かうルートを表と裏にそれぞれ記した地図。夢国研究所の住所を検索する時にスマホ等ではせず、喫茶店に置いてある事務用のパソコンで検索して手帳に記入した。PLから提案があれば、破られたページの隣のページにペンの跡(裏写りではなく筆圧の溝のようなもの)を見たり触ったりした場合に【アイデア】で地図ではないかと気付ける。失敗しても文字ではなさそうだということはわかる。【アイデア】に成功した場合はおおよその場所を把握できたことにしてここから1時間半程度でたどり着けるものとする。さらに【ナビゲート】に成功した場合は正確に場所を把握でき、ここから30分程で到着可能となる。
◆夫婦の寝室
こちらも力任せに荒らされている。机も棚もタンスもなにもかもがめちゃくちゃで、ここまで来るとかわり映えしない光景といってもいいくらいである。
【目星】でぐしゃぐしゃになった日記と金メダルを見つけることができる。
●父の日記抜粋
彩愛はすくすく育っているよ。特に大きな病気にかかることもなく健康そのもの。君にも見てほしかった…3人で暮らしたかった…やっぱり何度でもそう思うよ。あの日諦めたのは僕の心が弱かっただけなんじゃないかっていう思考にいつも陥る。そうじゃない、仕方ないこと、わかっていたことだと言ってくれたけど…割り切れない。やっぱり弱い男だよ僕は。
君に似て泳ぎが得意みたいだ。どんどん記録を塗り替えている。もしかしたら君のも塗り替えられるかもしれないな。
彩愛が20歳になった。君と同じ舞台で金メダルを獲ったそうだ。誇らしいし、本当によく似ている。
…そろそろ会いに行ってもいいかな?一瞬でいいんだ、20年も経って変わっているだろうけど、それでもいいんだ。それで僕は満足するから。今でも愛しているのは変わらないよ。
●金メダル
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28年前の世界水泳の個人メドレーで取得した金メダル(山吹水萌)
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4年前の世界水泳の個人メドレーで取得した金メダル(山吹彩愛)
※KP情報
三浦はスペアキーを持っているので昏海の会の人間を連れて情報を掴みに来た。しかし無能共の集まりでは収穫は得られず、荒らすだけ荒らして帰っていった。手帳のページが破れているのは山吹が自分で入院前に破ったからであり、入院中も肌身離さず持っていたのである。
憶曇大学病院
【交渉系技能】で担当医や朝に山吹が消えた病室を訪れた看護師から話を聞ける。件の看護師からは以下のことが聞ける。
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山吹の表情が段々と曇っていき、何か思い詰めている様な節があった
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室内に荒らされた形跡はなかった
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見舞いで来た人の内女性は1人、他は男性
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スマホに関しては行方不明届を出した際に警察へ渡した
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その他で最近変わったことといえば夢国を最近見ていない(※)
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夢国は未知の細胞に関する研究をしており、マウスから人体実験のフェイズへ移行してから病院関係者に声をかけまくっていた。もちろん全員に断られたが、その後被験者の公募を始めた。
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被験者の待遇は実験上、研究所に住み込みになるしかないが一月200万相当の補助が与えられ、個人情報は守られる
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夢国研究所の場所も聞けば教えてくれる
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夢国は自分の研究に興味を示してくれる人であれば歓迎する
※担当医も同様のことを知っているが、担当医が一緒にいる時に夢国の話を聞こうとすると嫌悪感をあらわにして探索者を追い出す(担当医は夢国のことがものすごく嫌いな昏海の会の男性である)。
話を一通り聞き終わり、探索者が病院を出ようとした際に【目星】か【聞き耳】で判定をする。成功すると院内に設置されてあるテレビに映るニュースを見る。これは喫茶店で見るニュースと同様のものである。
●ニュース
今朝、三浦区内の浜に謎の大きな鉛の塊が打ち上げられていた。中は空洞の部分があり、人ひとり入れる潜水艦の様相を示していた。しかし早朝のランニング中に発見したという第一発見者は、人を見かけてはいないらしい。現在は警察が回収し、調査をしている。
浦手の部屋
浦手の後をつけることに成功すると、彼がアパートの一室に入っていくことがわかる(ハイツ後光、101号室;2階建てで全6室)。数分経過すると浦手が「はい、大丈夫です。今から行きますんで、時間には間に合います。ウッス。お願いします。」と電話をしながら出てくる。電話をしていたためか、浦手は探索者に気付かずにどこかへと出かけていく。先ほどの電話を切った後、別の誰かに対して熱心に頼み込むような電話をかけるため判定なしで気付かれずに尾行できる。また、101号室の扉の鍵は閉まっているが窓の鍵は開いているどころか開け放たれていてカーテンがひらひらしている。
中は1K、バス・トイレ別、コンロは一口、保存食多め、部屋はマットやダンベルをはじめとした筋トレ道具が所狭しと置かれている。
◆テーブル
テーブルには「メモ」がある。
●メモ
対応テンプレ
どういったご用件でしょうか?
「海に行きたい」
→礼拝に来ている、3階の礼拝堂へ
「星の並びについての話がしたい」
→友好団体から来られた方、2階の関係者用事務所へ
「蜘蛛とライオンのうちわを見ませんでしたか?」
→新規の可能性、ひとまず1階で対応
「浮気調査をしてほしい等」
→普段の探偵業務、1階で対応
蜘、ラ、う、見にアンダーラインが引かれている
◆棚
棚には筋肉を鍛えるためのサプリや数冊のボディビルディング写真集、猿でもわかる系の筋トレ指南本がある。【目星】あるいは筋肉関連以外のものを探す宣言で「日記」が見つかる。
●日記(抜粋)
他所に負けてはいられない。俺達ももっと上を目指したい!あ、いいことひらめいた!ちょっと三浦さんに言ってみよ。
女子のみんなが深きものの子を孕む事になった。彼らとの間に子を授かれば稀にちょうあいをたまわることができる…って三浦さんが言ってた。女子もみんな喜んでた。俺たちは女子のサポートをする、昏海の会始まって以来の大仕事!よかった、言ってみるもんだわ。
順調に女子の皆は子どもを授かっているけど、ちょうあいまでは授かれていない。稀って言ってたもんなあ。
ついにちょうあいが来た!山吹が授かった!この5年間の下積みがようやくむくわれる!俺たちの神は見てくれていた!いあ!いあ!くとぅるふ!いえーーーーーい!!
「誕生祭の準備をしないといけないな!これから忙しくなるぞ!そうだ、せっかくだし隣町にいる銀の黄昏のみなさんも呼んで盛大に祝おう!フィナーレは…ちょうあいの子を覚醒させて、この街を海に沈める!俺たちの神にふさわしい水の都の完成だ!」
え?山吹が病院からいなくなった。なんで?どういうこと?さらわれたのかと思ったけど違うっぽい。
わかった!夢遊病だ!!だから自分からどっか行ったように見えたんだ!!いや〜俺天才だわ、明日進言しよ
どこ行ったのかが問題だって言われた…これが「盲点」ってやつか、思い知ったぜ…
昏海の会
アパートから出てきた浦手を尾行すると、3階建ての木造ビル(建物名:深海ビル)に入っていくのが見える。貸しビルの様だが、現在入っているのは1Fにある「三浦区探偵事務所」のみである。浦手がここに着くのは14時半少し前。
14時半を過ぎて少しするとビルから(正確には3階から下りてきた)男性が数人出てくる。探索者を気にする様子もなくどこかへと行ってしまう。話しかけると「すみません、依頼で出なくてはいけないので失礼します。お話でしたら中に担当の者がいますので。」と伝えて去っていく。浦手がビルに入ってすぐ1Fか2Fに入った場合は14時半過ぎに【聞き耳】で複数の人間が階段を下りる音が聞こえる。
また、1Fのインターホンを押すと男性の声が応対してくる。「はい、三浦区探偵事務所です。どういったご用件でしょうか?」
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「海に行きたい」と言った場合
「わかりました。3階へおあがりください。他の方もいますので鍵は開いております。
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「星の並びについての話がしたい」と言った場合
「わかりました。少々お待ちください。」と言ってから少しして中年の男性が鍵を持って出てきて「2階へ参りましょう」と促してくる。
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「蜘蛛とライオンのうちわを見ませんでしたか?」と言った場合
「そちらのご要件でしたか。どうぞお入りください」と言って中に通される。
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その他は一般探偵業の対応
◆1F:三浦区探偵事務所
中はデスクやソファ、テーブル等一通りの調度品を揃えたような特に目立つものはないシンプルな事務所である。
・「蜘蛛とライオンのうちわを見ませんでしたか?」で入らせてもらった場合、代表の三浦ですと自己紹介した後「ここをご存じですか?」「どなたから聞きましたか?」などの確認を取り、昏海の会に所属するのかを問う。入らないと言えば残念そうな顔はするが引き下がる。入りたい、中の様子を少し見てみたい等前向きな発言をすると、「おお、そうですかそうですか!今3階で礼拝中ですので行きましょうか!」「最近ですね、私たちの悲願が成ったというのにそれを独り占めする輩が現れましてね。是非ともあなたの力を借りたいのですよ。」と熱く勧誘をしながら3階へと先導する。特に描写しなくてもよいが、この時1階の鍵をかけ忘れている。
・通常の探偵業務として対応している場合に上の階について聞かれた場合は、他の社員が働いているスペースや書庫として活用していると教えてくれる。ビルの入り口に1Fにしか名前を入れていないのは顧客と対応する場所が1階だからである。
●机
机の引き出しの中には探偵業務の帳簿と別の帳簿が入っている。そこには以下の購入記録が書かれている。
『ルルイエ異本の写本』[中国語]:102万
『ネクロノミコンにおけるクトゥルフの写本』[英語]:68万
『ザンツー石板~コープランドの翻訳~』[英語]:43万
『ナコト写本』:交渉中
◆2F:関係者用応接室兼書庫
鍵がかかっているが、【鍵開け】で開けることが可能である。また三浦がいる場合は持っている鍵で開けて中に入れてくれる。
部屋の中はほとんどが本棚で占領されており、空いている手前側のスペースにソファとテーブル、ホワイトボード、ロッカーがある。雰囲気としては1F同様シンプルなものである。
三浦が探索者をソファに座るよう促した後、自分も腰掛けてから「初めてお見受けするのですが、担当の方が変わったのでしょうか?」「こちらではまだ見つかっておりません。」「そちらで何か進展はありましたか?」といった具合に、探索者を銀の黄昏というクトゥルフ系の宗教団体関係者だと思いこんで山吹捜索の件について聞いてくる。
探索者が銀の黄昏教団になりすましていれば、三浦は探索者の質問に対して知っていることを正直に伝える(主にこの建物の構造や山吹がこの教団に所属していたといった内容)。
●本棚
【図書館】で帳簿に書かれている3冊のいずれかを発見できる。写本の写本であったり保存状態が完璧ではなかったりしたためか、昏海の会が各魔道書を入手するときには既にいくらかの欠落がある。したがって習得可能な呪文の数や増加するクトゥルフ神話技能が多少減っている。しかし、それに気づくのはもちろん原本を知っている人物や冒涜的知識に造詣が深い者に限られる。また、呪文は斜め読みでは習得できない(基本p111~)。
『ルルイエ異本の写本』[中国語](KCp42/基本p109)
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正気度喪失:斜め読みで1d6 / 研究で2d6
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クトゥルフ神話技能:+12%(斜め読みは0)
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研究期間:54週
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斜め読み:108時間
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呪文:神格との接触/クトゥルフ(基本p260) 深きものとの接触(基本p269) 石の呪い(基本p251) クトゥルフのわしづかみ(基本p256) 忘却の波(基本p281)
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その他:読んだ者は【人類学】と【歴史】と【オカルト】の経験ロールを行うことができる。
『ネクロノミコンにおけるクトゥルフの写本』[英語] (KCp33)
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正気度喪失:斜め読みで1d2 / 研究で1d4
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クトゥルフ神話技能:+5%(斜め読みは0)
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研究期間:14週
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斜め読み:28時間
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呪文:深きものとの接触(基本p269) 旧き印(基本p280)
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その他:読んだ者は【人類学】と【オカルト】の経験ロールを行うことができる。また、この魔道書で習得した呪文は海でしか効果を発揮しない。
『ザンツー石板~コープランドの翻訳~』[英語] (KCp19-20)
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正気度喪失:斜め読みで1d2 / 研究で1d4
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クトゥルフ神話技能:+2%(斜め読みは0)
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研究期間:8週
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斜め読み:16時間
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呪文:なし
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その他:研究すると【人類学】と【オカルト】の経験ロールを行うことができる。
●ホワイトボート
ホワイトボードには「今日の全体予定」が書かれている。
今日の全体予定
9:00~9:30 礼拝
9:30~10:30 訓読(エイボンの書P34~)
10:30~11:00 報告及び会議(山吹捜索に関して)
11:00~ 捜索、リレー祈祷
14:30~ 捜索班・祈祷班、交代
18:00~18:30 今日の成果報告及び会議
18:30 解散
20:00 施錠(三浦)
●ロッカー
ロッカーには鍵がかかっている。【鍵開け】で開けると中にはショットガンが2丁収められていた。
12ゲージ・ショットガン(ポンプ)×2(基本p70)
弾×24発分
◆3F:礼拝室
鍵は開いている。【聞き耳】で複数の人間がぶつぶつ呟いたり、時折声を大きくしたりするようすが伺える。
中に入ると部屋の半分が可動壁で仕切られており、可動壁の向こう側の薄暗い空間から声が聞こえてくる。手前側に簡素なテーブルと椅子があり浦手が座っている(リレー祈祷の次の番が自分なのでスタンバイしていた)。浦手は探索者に気付くと、三浦がいるかいないかに関わらず「えっ、あんたらさっきの!……なんだよ、仲間だったなら早く言ってくれよ!一緒に山吹見つけようぜ!」と探索者と関係者と思い込む。ほどなくして浦手の祈祷の番が来て彼は可動壁の向こうへ行く。すると向こう側にいた男性が探索者(と三浦)に会釈をして部屋を出ていく(山吹を探しに行った)。10~20分程度すると別の男性がやってきて椅子に腰かける。
三浦を伴っている場合、共に祈りましょうと誘いながら彼は先に可動壁の横を通り祈り始める。浦手も同様だが、祈りの内容は山吹を見つけると強く誓うものから次第に神へ喜びを伝えるものへ変化していく。時折クトゥルフの名が飛び交うだろう。30分ほどで浦手は出てくるが、相変わらず探索者と共に行動することはない。三浦は祈りに夢中でしばらく出てこない。探索者が帰ろうとしても気付かない。
可動壁の横を通ると、照明は祭壇にある一本の蝋燭のみの薄暗い空間であった。その祭壇には、大きな額縁に石板が描かれている。この絵と冒涜的な祈りを捧げる男たちを目撃した探索者は直感的に恐怖を感じる。正気度喪失0/1d2。
※この絵は銀の黄昏所属の狂信者が夢に見たものを、記憶を頼りに描いたもので、解読しようとしても呪文を習得するようなことはない。
★探索者が浦手から教団関係者だと思われている場合
シナリオ開始から2日目の夕方に浦手から電話がかかってくる。「おい見つかったぞ!山吹が!ようやくアレを取り返せる日が来たぞ!これから決起集会を開くから来てくれよな!」と誘う。参加することも適当な理由で帰ることもこの場で向かう場所や時刻を聞くこともできる。
夢国研究所
住宅街から少し離れた場所に無機質な建物が一軒だけある。正面はガラス張りでありすぐ近くの壁にインターホンがあり、「憶曇大学付属病院医歯学総合研究科未来遺伝子専門研究事業所」という看板が見える。
チャイムを鳴らすとインターホン越しに夢国が対応する。山吹に関して聞くと「誰だそいつは」と言われ中に入れてもらえないが、実験について話がしたいというのであれば鍵が開けられ、中に入れてもらえる。一応【交渉技能】でも可。1階が研究フロアで2階が居住スペースとなっていて、探索者はプロジェクターやスクリーンが備えられた会議室に通され、彼の研究の成果を聞くことが出来る。
◆会議室
夢国は準備が整うと「ではこれから『ショゴスの生命活動に関する研究およびヒトとの融合』について紹介する。」と言い、発表に移る。研究の要点は以下のとおりである。
<序文>
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ショゴスという未知の細胞を発見した
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ショゴスは非常に優秀な再生、破壊、増殖の力を有している
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この細胞を用いて新たな生命体をつくれないかと考えた
<本文>
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手始めにマウスにショゴスを組み込む
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最初はすぐに死んだが研究を重ねるにつれて生存日数が伸びていった
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マウス内のショゴスを活性化および機能停止させる化学成分を調製した
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自らが開発した活性剤および停止剤はマウスに対して上手く作用した
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活性剤を打つとマウス内のショゴスは飛躍的に成長し、マウスを食いつぶす
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停止剤を打つとマウス内のショゴスは瞬時に活動を停止し、マウスは生存する
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人体実験のフェイズに以降し、上記の内容が人体にも有効であることを確認
-
今回の被験体は妊婦であり、母体には再生の力、乳児には破壊の力が顕著に現れた
-
乳児はショゴスを抜きにしても通常の人間とは異なる生命体だった
-
元々の乳児の生命力とショゴスの侵食が平衡状態にあり、形を保っている。
<結論>
-
人体とショゴスの融合は可能
-
体内のショゴスも外部から管理が可能
<今後>
元々はヒトとショゴスの融合についてより多くのデータを取る予定だったが、より興味深い生命体に出会ったため、そちらの研究を優先して行う。現在は基本的な生命活動を調べている。
※この発表を聞いた探索者は1/1d6の正気度喪失およびクトゥルフ神話技能2%の獲得
質疑応答を終えるとちょうど扉が開き、山吹が夢国に定期観察の時間ですと呼びに来ていた。山吹は「お客人なんて珍しいですね。ごゆっくりどうぞ。」と軽く挨拶(名乗りはしない)をして夢国と共に実験室へ向かう(中宮がいると非常に驚き、話したいことはたくさんあるけどちょっと待っていてと言う)。夢国は探索者に満足したら適当に帰っておいてくれとだけ伝える。
山吹を呼び止めて話を聞こうとすると少し待ってと言われる。彼女らの要件が終わると話を聞いてくれる。浦手や昏海の会の名前を出すと顔色を変えて、ここにいるということは隠してほしいと懇願される。その後実験室から戻ってくると改めて事情を説明してくれる。【目星】で服に所々穴が空いているのがわかる(だいたいは白衣に隠れている)。
※戻ってくるまで約30分かかり、その間に1ターンに1ヶ所の探索が可能として2ターン行動可能。
◆実験室
扉を開けるとドラフトの音とスタビライザーに揺れるいくつかの調合途中の薬品の臭いが探索者に届く。様々な器具や設備に囲まれた、ベッドのような作業台のような場所の周りに夢国と山吹がいる。彼らが観察していたのは、小さなバケモノであった。大きさこそ乳児に違いなかったが、体は細長く曲がって尾ひれがついていたり、蝙蝠に似た小さな翼が背中で動いていたり、さらには頭部や腕から玉虫色のぬらぬらとした触手が生えており、その触手には無数の目や鼻や口が蠢き、不協和音をまき散らしながら自らの身体を貪っていた。しかし、触手がウロボロスの如く自身を食い尽くすことはない。バケモノの身体は、食われた部分から即座に再生を始める。このバケモノを2人は熱心に観察している。この光景を目撃した探索者は正気度喪失1/1d8(慣れルール適用)
また、子どもの診察台のようなベッド以外にもう1つベッドがある。一般的な寝具だった。
◆飼育室
実験室の奥に鍵のかかった扉があり、夢国の持っている鍵か【鍵開け】で開けることが可能。そこにSIZ1程度のショゴスがケージに入れられている。ケージの数は約100個。探索者はテケリ・リ大合唱をサラウンドで聞くことになる。正気度喪失1d6/1d20(慣れルール適用)
◆薬品庫
【鍵開け】で入ることができ、活性剤と停止剤を入手できる。あると考えられるものであれば数々の試薬や調製した薬品を入手できる。
◆寝室
夢国の散らかった部屋には日記がベッドわきに転がっている。内容は日本語で書かれている。
●各小説概要(ここ内容は日本語)
『物体Xとの邂逅』[サンスクリット語]
推理ホラー。汚らしい生命体が人間をゼリー状の物体で覆って捕食し、その人間の姿を模倣する姿を主人公が目撃したところから始まる。人間が知らぬ間に異なる種族に取って代わられる恐怖を描いていた。しかし、主人公が事件の真相を探る物語かと思えば、その主人公こそが最初に地球に来た物体Xだったというオチだ。思い返せば都合がよすぎた点がいくつかある。絶妙に解決に繋がらなかったり、解決しても次が既に発生していたりと、物体Xを追う立場を誠実にこなしながらも自分が物体Xだとばれない狡猾な生命体だった。サンスクリット語を学んでいて良かった。最後の方にこの生命への対処法として1つの呪文が記されていた。一時凌ぎにしかならないが、触れると感染してしまうため、触れる事すら拒否できるこの呪文は有用だろう。
『ユゴス混じりて』[英語]
人間の女とユゴスよりの使者が愛を育むというもの。後日談として子どもがいたが、生殖活動や出産の描写は一切なかったため実際に彼女らの子どもなのかは不明だ。ユゴスよりの使者という生命体自体は知能が高く面白い生き物であったが、求めていたものとは違った。
以前ユゴスよりのものに出会った際に入手した繊維を持て余していたが、あいつが白衣をこさえていた。こいつは何らかのエネルギーを秘めているようでなかなかに有用だ。
『南極に眠るショゴス』[日本語]
小学生の頃に読んだものを久々に読んだが、やはり面白い。南極に眠っていた玉虫色の生物。その姿を自在に変えることが出来る。モノにもヒトにもなれるらしい。単体だけでなく他の生物とキメラとしての存在も確認されているらしい。増えすぎるのがかなりの問題だから真っ先にそれをどうにかしなかったのはこの物語の人物が浅はかだったというところだろう。
◆書斎
寝室よりは整っている程度の、本棚と机がある簡素な仕事部屋である。
●机
ラテン語の『ショゴス制御薬調製に関する研究』が置いてある。
『ショゴス制御薬調製に関する研究』[ラテン語](著者不明)
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正気度喪失:斜め読みで1d2 / 研究で1d4
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クトゥルフ神話技能:+3%(斜め読みは0)
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研究期間:10週
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斜め読み:20時間
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呪文:なし
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その他:研究を終えるとショゴスの活性剤および停止剤の製造方法を理解することができる。ただし素材としてショゴスが必要になる。ショゴスのSIZ1につき3本の活性剤or停止剤をつくることが可能である。
●本棚
【図書館】で3冊の内どれかがランダムで見つかる。
『物体Xとの邂逅』[サンスクリット語]
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正気度喪失:読了して1d3
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クトゥルフ神話技能:+1%
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必要時間:10時間
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呪文:被害をそらす(基本p278)
『ユゴス混じりて』[英語]
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正気度喪失:読了して1
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クトゥルフ神話技能:+1%
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必要時間:6時間
『南極に眠るショゴス』[日本語]
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正気度喪失:読了して1
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クトゥルフ神話技能:+1%
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必要時間:6時間
山吹の事情
探索者が山吹に対して浦手から協力を仰がれたことや、昏海の会の話をするとみるみる青ざめてどうか黙っていてほしいと懇願する。何かを問われると山吹は事情を説明してくれる。
自分は元々「昏海の会」という教団に所属していた。その教団がここ最近、深きものという種族との間に特別な混血種を得ようとしており、自分も賛同していた。やがて自分も混血種を孕み、それが特別な子だとわかり皆に喜ばれた。自分も最初は嬉しかったが、お腹で育んでいるうちに教団の為の特別な子としてではなく、ただ自分の子として育てたいと思うようになって意を決して逃げてきた。そこで隠れ蓑としてもちょうどいい夢国研究所の被験者として名乗り出たのだった。探索者に対しては改めて、自分たちのことは昏海の会の者には告げないでくれと懇願する。
※山吹の心情
探索者が昏海に情報を売ろうが隠そうが、子どもの見本となるべき親としての立場もあるため山吹は無暗に人を傷つけることはしない。子どもに危害が加えられそうになった場合はひたすら盾となる。いわゆるガンジー戦法をとり、拳を振ることはない。拳を振るうのは子どもが奪われたときである。
>★山吹との会話後or★中宮がいる場合へ
★山吹との会話後
山吹を探していたという話をして事情を聴くと【目星】に成功した探索者と山吹は建物の外に人影を見る。その人影が電話をしながらその場を去っていく。山吹は、仲間を集めてこの子を奪いに来るはずという。見ず知らずの人にお願いするのは気が引けるが、探索者に力を貸してくださいと頼んでくる(夢国は金なら用意する)。
断ると、悲しい顔をしながらも「無関係の人を巻き込むわけにはいきませんよね。すみませんでした。ここにいると危険ですので、今のうちにここを離れた方が良いでしょう。」と、探索者を無理やり引き込むことはしない。
了承すると、ありがとうございますと深く頭を下げ、探索者にこれからどうするかの2つの案を提示する。1つは夢国研究所で籠城しながら戦う籠城作戦。もう1つは先にこちらが昏海の会の拠点を叩きに行く先手必勝である。三浦区からの逃亡は銀の黄昏の脅威がることと、子どもがいつ暴走するかわからないので夢国研究所を離れたくない。少なくとも昏海の会をどうにかしてから別の潜伏先を探したいと考えている。しかし潜伏先としてよさそうな場所を提示することが出来れば可能。
>探索者の選択によって籠城作戦ルート、先手必勝ルート、逃走ルート等へ
★中宮がいる場合
山吹から事情を聴き、探索者はこれからどうしようかと考えているところかもしれない、何かを提案しようとしたところかもしれない。しかし、それよりも早く動いた者がいた。
「一番簡単な方法があります、こうすればいいのよ。」
グサリ。と、嫌な音がする。音のする方を見れば、そこには山吹がいた。山吹の胸からは鋭い刃が、血肉をこびりつかせながら、赤い噴水を吐き出しながら、鈍く光っている。噴水の時間が終わると共に刃は引き抜かれ、山吹は倒れる。抱いていた子どもは山吹の手から落ち、泣き声とも叫び声とも呼べるような気味の悪い鈴の音が響く。山吹の後ろに立っていたのは中宮だった。返り血をふんだんに浴びた中宮は、自らの手から伸びるかぎ爪に舌を伸ばす。意地汚い食事のように、爪にこびり付いた血肉を啜る。長い爪を舐めながら、中宮は徐々に姿を変えていく。髪の毛は青い虫に変わり、頭には蛆虫の群れが湧き、額に狂気と憎悪に満ちた第3の目が開眼する。胸から大量の血を流して倒れた山吹と、中宮の変わり果てた姿を目撃した探索者は正気度喪失1/1d10+1。
物体Xとの戦闘
中宮が物体Xとしての本当の姿を現したところから戦闘となる。戦闘中に山吹の様子を確認すると、まだ息があることがわかる。また、【目星】【医学】【応急手当】のいずれかで徐々に再生が始まり胸の傷が塞がりつつあることがわかる。
物体Xに感染した場合は四肢のどこかに「不気味なジェル状の何かが纏わりついている。どうあがいても剥がれる様子がない」などの描写を挟んだ方がよい。
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1ラウンド目
夢国は薬品庫へ向かう。その前に攻撃を受けていた場合、「被害をそらす」でダメージ回避する。
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2ラウンド目終了時
イベントシーンが入る。以下描写。
メキリ、メキリと肉の軋む音がする。音は転がっていた子どもから聞こえてくる。見れば、子どもは自分を包んでいた衣を弾き飛ばし、明らかに先ほどより大きくなっている。急激な成長は止まらず、1m、2m、3mと肥大する。肥大する肉に追いつけなかったのか、皮膚がビリビリと裂ける。その裂け目から赤と青と黒の絵の具を無邪気に混ぜ合わせた色をした肉がはみ出ている。2本の足で立ち、2本の腕を持っていることだけみれば人の形を成していると言えるが、腕からは中宮だった者よりも巨大なかぎ爪が伸びている。頭はタコの様であり、ボロボロな蝙蝠の翼も大きく育ち、首元には玉虫色の触手が蠢いている。このバケモノを目撃した探索者は正気度喪失1d6/1d20(慣れルール適用)。
急成長したバケモノは憎悪に満ちた雄叫びを上げると一直線に中宮だった者に突撃し、新しく生えたばかりのかぎ爪を振り下ろす。必中でダメージロールを行う。
ここまでのイベントシーンを終えてから3ラウンド目を開始する。寵愛の子の攻撃対象は物体X、物体Xの攻撃対象は寵愛の子を含むこの場の全員とする。
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3ラウンド目
夢国がこのラウンドの行動として活性剤を打ちこむ(自動成功でよいがKPの好みで【こぶし】か【投擲】の判定を必要とさせても良い)。活性剤を打ちこまれた物体Xは苦しみ始め、1d3のスリップダメージを負う。更に次のラウンドから回避不能となる(啜った中宮の血肉を通してショゴスの成分が物体Xの中に入っているため、体内で活性したショゴス成分に苦しめられる)。あとは物体Xを倒せば戦闘終了である。
戦闘が終わると、寵愛の子が物体Xを肉片一つ残らず食べつくす。まだまだ大きくなる一方な寵愛の子はロビーのガラスをたやすく破壊し、外へと飛び出した。方向を見るにどうやら海のようだ。
よろよろと立ち上がった山吹は「海なら…私の船があります。」と探索者を案内する。そして移動する前に夢国から活性剤と停止剤を12本ずつ渡される。
ただし物体Xに感染した探索者はここで離脱、別処理となる。
感染者に対する処理
物体Xに感染した探索者は特殊な手袋をした夢国に止められる。逆らおうとしても体に力が入らず、夢国に実験室へと引きずられていく。実験室の台に乗せられながら夢国の話を聞くことになる。
「お前はさっきの物体Xとやらに感染した。もうじきさっきのやつと同じものになる。それを世にはなったら俺も知らねぇうちに感染しちまうからよ、さっさと治療させてもらう。拒否権はない。なに、まだ感染は全身にまわっちゃいねぇ。四肢のうちの一本で片が付く。麻酔が効くのを待ってたいら手遅れだからな、さっそくやらせてもらう。」
彼は一度奥の部屋に行き、すぐにいくつかのケージを持って帰ってきた。
「ただの切断だと感染源が残っちまうからな、こいつに食わせる。俺の技量と、お前の精神力と生命力と…あとは運があれば生きていられるだろうよ。ま、頑張んな。」
そういうと夢国はゲージを開ける。中から出てきたのは玉虫色の、無数の歯や目を持つ小さな集合体だった。それが2つ3つとあなたの感染した部位へと向かい、食べられる。皮膚を破り、肉を啜り、骨を砕く。あなたは麻酔もなしに四肢を得体のしれない者に貪られる。2d10のダメージおよび、正気度喪失1d6+1/1d20+1d8(慣れルール適用)。
耐久値もSANも1以上残っている場合は「お前さんがこの荒治療に耐えた逸話は後世に残るかもしれんな。まぁ俺は忘れるだろうから広めるんならお前さんが語ってくれ。」という夢国の言葉を最後に意識を出血多量で意識を失う。
SAN0となった場合はそのままロストであるが、耐久値が0以下となった場合には夢国が2回【医学】判定をし、成功回数分1d3の耐久値を回復する。これで耐久値が1以上となった場合は、朦朧とする意識の中「大したもんだな。おつかれさん。」という夢国の声を聞く。
夢国の【医学】で回復しても0以下の場合、探索者は【CON*5】の判定を行う。これに成功すれば「だめかと思ったが、鍛冶場の馬鹿力ってやつかな。」こんな夢国の言葉を最後にあなたの意識は暗転する。
【CON*5】にも失敗した場合、最後に【幸運】判定を行う。これに成功した場合以下の描写を行う。
探索者の心臓近くまで侵食していたショゴスが、不気味な感触で心臓を撫でる。あなたにはそれがはっきりとわかる。しかし先ほどまでのおぞましさはどこか薄れ、ある種の心地よさを感じる。そして、食われてなくなっていたはずの四肢に神経が通う。指先を自分の意思で動かせることを確認すると、夢国の驚きと満足げな表情を最後に、あなたの意識はそこで途切れた。
この探索者はショゴスとの融合に成功し、山吹と似た状態になる。
【幸運】にも失敗した場合とSAN0になった探索者はそのままショゴスに全身を食われた後、夢国に停止剤を打たれて生命活動を終える。
※後遺症について
【幸運】の判定を行って生還した探索者はショゴスとの融合に成功する。見た目は人間だが、山吹のような再生力を手にする(1ラウンドあたり1d4点の回復)。しかし、今後ショゴスを使役する者に遭遇し、その者がショゴスを使役した時に【幸運】か【CON*5】の判定が入る。これに失敗すると探索者は体内のショゴスに心臓を締め付けられて1d10のスリップダメージを負う。これは使役が終わるまで続く。
それ以外、つまり【CON*5】の判定までで生還した探索者はショゴスを使った義手・義足をかってにつけられている。見た目は人間のそれだが、上記同様に【幸運】か【CON*5】の判定が入る。失敗すると探索者の義手・義足は、腕や脚の形を止めてショゴスの姿となり、元々使役されていたショゴスの元にあつまる。SIZは2d10のダメージを耐えた場合は2、【医学】で蘇生していた場合は3、【CON*5】でなんとか生還した場合は4である。ショゴスが無くなった部分の断面は皮膚が形成されていて出血もダメージもないが、目撃した者はショゴス遭遇の正気度喪失とは別で1/1d3の正気度を喪失する。
船出
探索者たちは山吹の案内で近くの港へと向かう。船体に深丸(ふかまる)と書かれた漁船は小さくはないので全員乗ることができる。山吹がエンジンキーを回し、沖に向かっていると、海の上に立つ寵愛の子と一隻の船が視界に入る。乗っている人影から察するに大きめの船なのだろうが、それよりも寵愛の子が大きい。3、4mどころの話ではなくなっている。山吹曰くあの船は昏海の会の船らしい。
昏海の人間が寵愛の子を利用してこの街を沈めようとしているのか…。それを否定するかのように事態が変わる。寵愛の子は海面につけていた手を天へと振り上げる。それにつられるように海水が縦に伸び、船に襲い掛かる。同時に発生した波と挟撃され、転覆する。さらに寵愛の子は振り上げた拳をその船へと叩きつける。一撃で船は真っ二つになった。乗っていた人たちは遠目からでも浮かび上がっていないのがわかる。寵愛の子は再び海面に手をつけ、何かをぶつぶつ呟くような不快な音を発している。
「私がギリギリまで船を寄せるから、後はお願い!」山吹はそう言い、寵愛の子に近づいていく。寵愛の子を中心に円を描くようにして、止まらずに少しずつ寄せていく。
夢国がいれば「やることわかってるな?」「活性剤でやつの体内のショゴスを強化しろ。成長し続ける体をショゴスに食わせておとなしくさせる。」と発言する。【アイデア】で体の大きさから一定量の強化剤は必要だろうが打ちすぎるとショゴスが優位に立ち、完全にショゴス化するかもしれないと気づく。
ここから戦闘ラウンドとなる。最初のラウンドは船がまだ船が遠く、通常値の【投擲】でしか薬は届かない。山吹の【操縦(船舶)】が成功したら早く近づくことができ、【投擲】に+25%の補正が付く。また、【操縦(船舶)】で近づくと深きもの1d3体が船に乗り上げて探索者に攻撃をしかけてくる。さらに5R目に【操縦(船舶)】の判定結果に関係なく1d3体の深きものが乗り上げてくる。
寵愛の子はなおも成長し続けている。その影響と、ゆっくり船を寄せていることから1R毎に【投擲】に+5%の補正が付与される。
寵愛の子を止める条件は7R以内に3本の強化剤を刺すことである。3本目を刺したラウンドの終了時にイベントシーンが入るので、3本目を刺したラウンドのみ4本目以降を刺すことが可能。7R終了時に寵愛を受けしものがまだ活性剤を3本打たれていない場合、忘却の波が発動して探索者は船ごと飲み込まれて全員ロストとなる(探索者の人数や技能に応じてKPが妥当だと思うラウンド数に変更して構わない)。
3本打ち込んだ→Aへ、4本打ち込んだ→Bへ、7Rが経過した→Cへ、寵愛の子に停止剤を打ち込んだ→Dへ。
活性剤を打ちこまれ時の寵愛の子の様子
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1本目
一度体勢を崩すがまだ唱えている。
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2本目
その場に倒れるが、再び起き上がり暴れる。玉虫色の触手が少し元気になる。
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3本目
息はあるが、襲ってくる様子はない。玉虫色の触手が体を食べる速度が速くなる。
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4本目
体の表面がぬらぬらとした玉虫色を帯び、完全にショゴス化する。
A.強化剤を3本打ち込んだ
寵愛の子はショゴスに鱗を食われ、翼をちぎられ、体中を食われみるみる小さくなる。自分の身体を貪る塊をちぎっては海に叩きつけて抵抗していたが、大きさが1m弱になったあたりで寵愛の子は疲れ果てたように海に体を預けた。寵愛の子から生えているショゴスも食事時間が終わったのか、不快な咀嚼音が落ち着く。よく見ると完全に捕食を止めたわけではなく、ショゴスの侵食と子どもの成長力に均衡が見られるような状態であった。山吹が漁で使う網を取り出して子どもを海からすくいあげる。子どもは小さな乳児にこそ戻らなかったが、すっかりおとなしくなり今は眠っている。相変わらず人間とかけ離れた見た目をしてはいるが。残った深きものは戻ってしまった子どもを見て退散する。戦いは終結した。
港に戻って皆が船から降りると、改めて山吹と夢国は探索者に礼を言うだろう。彼女らはこれからどこか別の場所に拠点を移し、ひっそりと暮らしていくのだろう。夢国は残しておくといろいろやっかいということで研究所を燃やしてから発つらしい。今後無事に暮らせるかどうかの保障はどこにもない。危険と隣り合わせだということを自覚しながらも、彼らは最善を尽くし続けることだろう。
※ここで物語は終わりとなるが、探索者にやり残したことはないかを聞いてもよい。こどもを殺す選択肢があったら以下の内容を伝える。なければここでシナリオエンドとなる。
もし災いの芽を摘むなら今の内だということは、呼吸もたえだえの醜い生命を見れば明白である。【アイデア】で殺す場合は醜い子どもとショゴスの両方を殺す必要があるのだと気づく。
A-1.子どもを殺す
寵愛の子の耐久値は2、ショゴス部分の耐久値は20程度である。殺す方法は、大きく2つある。1つは子どもの耐久値を何らかの方法で0以下にしたうえでショゴスに停止剤を打ち込む方法、もう1つは活性剤1本を打って完全にショゴス化させて子どもを食わせてから停止剤を打ち込む方法である。停止剤は1本で十分である。【こぶし】に成功すれば打ち込める。
1R以内の行動であれば山吹の妨害を受けずに行動が可能となる。山吹は一貫して子どもを守ろうとするが、夢国は子どもがショゴス化してからは場の鎮静化のため停止剤を打ち込む。
バケモノを完全に殺すことに成功でシナリオエンドとなる。以下描写。
バケモノは動きを止め、玉虫色のゲルから白い塊へと急速に変化し、ボロボロと崩れた。山吹は膝から崩れ落ち、呆然とする。少しずつ白い塊に這い寄り、手を伸ばす。崩れた白い塊の一部を抱きしめる。抱きしめた先からさらに崩れ、腕を離れていく。彼女の目は大きく見開かれている。涙は無く、何もないを抱きしめたまま動かなくなった。災いの芽を早いうちに摘むことができた探索者は日常を取り戻す。
「次のニュースです。憶曇大学病院に所属している夢国准教授が所持していた研究所が全焼しました。昨晩、突如として研究所に火の手が上がりました。火は目撃した近隣住民の通報によって駆けつけた消防隊によって沈下されましたが、建物は全焼、周囲の木々に燃え移ることはありませんでした。火元とみられる実験室に1人の焼死体が確認されており、警察は実験による不慮の事故の可能性が高いとみて捜査を続けているとのことです。次のニュースです。…」
シナリオエンド
A-2.子どもを奪い去る
港につき、船を降りてから子どもを奪うことが可能となる。子どもを奪う際は【こぶし】か【DEX*5】で判定する。子どもは軽いので抱える判定は不要だがDEXに-1の補正が入る。子どもを奪ったら即座に山吹とのDEX対抗に移る。成功で彼女らを撒くことができる。失敗した場合は、山吹が子どもを抱えた探索者に【こぶし】および夢国が山吹に活性剤を打ち込んだ後に戦闘ラウンドとなる。活性剤の効果はSTRに+6d6の補正である。子どもを抱えた探索者が逃走に成功あるいは山吹の無力化で子どもを所持した状態でその場を去ることができる。子どもを抱えた探索者が山吹に倒される(気絶か耐久値0以下)と子どもは山吹の元に戻る。再度子どもを奪う場合は活性した山吹にSTR対抗で勝つか無力化させるかである。山吹らが逃走することはないため、探索者が立ち向かう限り抵抗を続けるが、子どもが山吹側にあるのであれば逃げる探索者を追うことはない。子どもを奪えずに撤退した場合はそのままシナリオエンドとなる。連絡を取ることはもうできないだろう。
子どもを所持した状態で山吹たちから離れることが出来た場合、【化学】【生物学】【薬学】【医学】【経理】【幸運】を全て-30%で成功させると無事に手元に置くことが出来る。連れ去って数分で子どもを捨て去る場合はこの判定は不要だが、後で売り飛ばすなりなんなりで手放すにしても数分で片が付かない内容であれば上記の判定を行う。失敗すると暴走した子どもに噛み付き攻撃にあう(至近距離での攻撃とみなし成功率は75%ではなく自動成功)ため【回避】判定を行う。回避に失敗すると子どもを手元に置こうとした探索者は1d8+3d6のダメージを受ける。暴走した子どもは海へと向かい、Cと同様の津波の処理を行う。
シナリオエンド
A-3.停止剤を打った
先に停止剤を打つとショゴス部分が死に、平衡状態が崩れて子どもが急成長する。留まることをしらず、肥大化している。この寵愛の子にショゴスは存在しない。今のあなた方にこのバケモノを止める手段はない。たえず巨大化するバケモノにあなた方は成す術なく踏み潰され叩き潰される。
シナリオエンド
B.強化剤を4本以上打ち込んだ
寵愛の子はショゴスに鱗を食われ、翼をちぎられ、全身を玉虫色に覆われる。ヒト型を失い、不定形なゲル状のバケモノとなった。正気度喪失1d6/1d20(慣れルール適用)。
この後は停止剤を2本打ち込むことで戦闘は終了する。1本ではSIZが半分になるに留まる。ショゴスのステータス等は基本ルルブに従い、攻撃は船に対して行うものとする。船の耐久値は100で回避は【操縦(船舶)】で判定する。なお、ショゴス化した段階で深きものは逃走する。山吹は操縦を止め、ショゴスの前に立ちはだかり、我が子を守ろうとする。1Rに1回だけバケモノへの攻撃は阻まれる。山吹は基本的に攻撃をしかけてこないが、活性剤が山吹に打たれた場合は山吹の中のショゴスが暴れ出し、攻撃を仕掛ける。夢国は場の鎮静化させるため、ショゴスに停止剤を打つ。探索者にもそのように呼びかけるだろう。山吹は停止剤が撃たれた場合、急速に疲弊しその場を動けなくなる(ショゴスへの停止剤をかばった際に山吹の【こぶし】が失敗しうまく叩き落とせなかった場合にも同様である)。
ショゴスに2本停止剤を打ち、ショゴスを無力化すると戦闘は終わる。以下描写。
バケモノは動きを止め、玉虫色のゲルから白い塊へと急速に変化し、ボロボロと崩れ、海中へ沈んでいく。山吹は呆然と立ち尽くす。やがてよろよろと歩き、縁につかまり、バケモノがいた場所を眺めている。次の瞬間、勢いよく海に飛び込んだ。それっきり、彼女は一度も海面に浮上することはなかった。探索者は夢国の不慣れな操縦でなんとか港に戻り、日常へと戻っていく。
※もし、探索者が後を追っても山吹を助けることはできない。【水泳】【目星】に成功しても、着衣とは思えない速さで海底へと向かう山吹の姿が見えるのみであり、誰も追いつくことはできない。
シナリオエンド
C.7R経過した
寵愛の子から響く不気味な声がようやく終わった。途端、バケモノは海面につけていた両手を振りあげる。海が縦に伸び、巨大な壁となる。海の壁は瞬く間に船ごとあなた方を飲み込む。手を伸ばし、足をばたつかせ、どれだけもがこうとも上がることはできない。海に意思があるかのように海底へと引きずり込まれていく。目の前に広がる昏い海、その記憶を最後にあなたの意識は忘却の彼方へとかき消されていった。
シナリオエンド
D.停止剤を打ち込んだ
寵愛を受けしものの首元からわずかに伸びていた玉虫色の触手は白く染まり、ボロボロと崩れ落ちた。それを皮切りにバケモノは更に巨大化する。10m、20m、30m、どれだけ大きくなっても成長は止まることがない。今のあなた方に、もうこのバケモノをどうにかする手段はない。大いなる驚異の前にあなた方はなすすべなく、乗っている船を掴まれ、高く持ち上げられ、海面に叩きつけられる。肥大化の止まらないバケモノがこの星を破壊するまで、そう時間はかからないだろう。
シナリオエンド
籠城作戦ルート
夢国研究所でバリケードや投擲物を用意し、階段を塞いで時間を稼ぎつつ2階から攻撃してじわじわと戦力を削る。戦闘に自信のある者がいるなら建物の外の茂みに潜み、機を見て背後から不意打ち(挟撃)をするのも良い。ショゴスやその死骸も投擲物として使えるが扱いには注意が必要。
※夢国は敵が来る前に「何かが起きた時に対応できるやつは多い方がいい」と言って探索者たちに活性剤と停止剤を1本ずつ渡してくる。
バリケードの基本耐久値は30点だが【STR*5】に成功すれば1d3増加させてもよい(1人1回まで)
探索者がやりたい準備を終えると、外に人影を見たり足音を聞いたりする。外に潜伏している探索者は、昏海の会の人間を目撃、人数を正確に把握できる。さらに深きものも見ることになる(正気度喪失0/1d6)。KPは敵の総数を探索者の人数や戦闘技能を考慮して決めておくのがよい。目安としては探索者4人かつ特別目立った戦闘技能(高確率マーシャルアーツや銃火器技能)なしに対して人間8人&深きもの4体である。なお、人間の内2人はショットガンで他は鉄パイプを持っている。深きものは何も持っていない。
エネミーの行動理念は寵愛の子の確保である。人間は扉を叩き割って侵入した後、バリケードや探索者およびNPCの布陣を見て2階にいるのだろうと思い行動する。教団員は捜索がメインだが進行方向にバリケードや立ちはだかる人がいると攻撃する。教団員の戦闘技能は全て初期値だが、バリケードに攻撃する際は対象が動かないため失敗しても1のダメージを与える。深きものは寵愛の子が人間の所有物から解放され、覚醒すればよいので、研究所の扉が開いてからは呪文(「深きものとの接触」の応用)を唱える。唱えてから5ターンorバリケードが壊れたラウンドの終了時にイベントシーンが入る。
★バリケードが完全に破壊される前に深きものを全て無力化した場合、子どもは暴走しない。あとは残った教団員を無力化すれば、探索者に何かやりたいことはるかどうか聞いてからシナリオエンドとなる。
子どもを殺す等の選択肢がある場合は【アイデア】で殺す場合は醜い子どもとショゴスの両方を殺す必要があるのだと気づかせてよい。その後は「船出」の項のA-1~3を参照。
※ただしこのときの寵愛の子の耐久値は18である(「登場人物」の項を参照)。
★イベントシーン
突然2階風呂場の壁が内側から爆発するかのように破壊された。中から飛び出してきたのは4m程の巨人だった。巨人は鋭い爪を持ち、体は不規則に生えた歪な鱗に覆われていた。体つきは深きものと似ているかもしれないが、背中には小さな蝙蝠の翼を携えており、頭部付近からは無数の目や口や鼻を持つ玉虫色の触手が伸びている。そしてその頭部自体は、目も開きっていない、幼い人間の子供のように見える。これが冒涜的な生命体でなくして何であろうか。教団の人間たちは、あなたがたをそっちのけでバケモノの下へ駆け出す。「寵愛だ!」「クトゥルフ様より頂いた寵愛だ!」口々に賛美の声を上げた。しかし、近付いた者は皆バケモノに薙ぎ払われ、壁に叩きつけられ、動かなくなる。バケモノはひとしきり暴れた後、外へ出ていく。方向を見るに海のようだった。深きものたちもそれについて行った。この光景を目撃した探索者は正気度喪失1d6+1/1d20+1d3
このイベントの後、山吹が近くの港に自分の父から譲り受けた船があるとのことでそれを使って海へ追いかけるとのこと。鍵は山吹がもっている。また、向かう前に夢国から活性剤と停止剤を12本ずつ渡される。
先手必勝ルート
昏海の会が来るのを待たずにこちらから相手側の本拠地に攻め込む。利点は敵の武装が整いきる前にけりをつけることができる。
山吹は非常時の肉盾として立ち回るため深海ビルについてからは夢国がベビーキャリアのようなリュックで背負う。通常のベビーキャリアとは異なり、背負っている夢国に危害が及ばないように子どもを完全に覆いかぶせるつくりになっている(顔のところのみ半透明な生地を使用)。また、子どもを背負ってから山吹と探索者全員に活性剤と停止剤を1本ずつ渡しながら以下の内容を告げる。
「自分でも持ってはいるが常に後ろでよく見えないからな。こいつが暴走したらそいつをガキに刺してくれ。ガキの方がでかくなったら活性剤、玉虫色のぬらぬらした触手が出てきたら停止剤だ。今のとこ寝ているから大丈夫だが、対応ミスったら最悪全員死ぬからちゃんと覚えといてくれよ。」
建物内は1階と2階は鍵が閉まっているので中に入るには【鍵開け】が必要である。教団員は全員3階にいる。探索で手に入る情報は「昏海の会」の項を参照。夢国は子どもを背負っているため先頭に立つ事はない。戦闘も参加しない。
戦闘において山吹はアイテムとして扱い、1ターンに1度味方への攻撃をかばうことができる。ショゴスによる再生力があるのでダメージは気にしなくてよい。
◆3F
扉を開けると蝋燭一本の明かりで、男たちが1つの絵の前で熱心に祈りを捧げているところだった。探索者の侵入に気付いた教団員が「誰だ?!」と狼狽しながら照明を点ける。山吹の顔を見た教団員たちは「向こうから来やがったぞ!」「とっちめろ!」とあなた方に襲い掛かってくる。浦手も「なんでだよ…信じてたのに!」と探索者らに怒りを露わにする。
ここから戦闘開始となる。中にいるエネミーは三浦と浦手を含む教団員5~7人程度で武器はまだ持っていない(鉄パイプ等も2階にある)。彼ら全員を無力化することで戦闘終了となる。
戦闘を終えると、山吹と夢国は探索者に礼を言うだろう。彼らをしばらく動けないようにした後、彼女らはこれからどこか別の場所に拠点を移し、ひっそりと暮らしていくのだろう。今後彼女らが無事に暮らせるかどうかの保障はどこにもないため、不安はあるかもしれないが、危険と隣り合わせだということを自覚しながらも、最善を尽くし続けることだろう。
探索者にやり残したことはないか聞いて、特になければここでシナリオエンドとなる。
この醜い生命が人間に危害を及ぼさないと言い切ることは困難である。【アイデア】で殺す場合は醜い子どもとショゴスの両方を殺す必要があるのだと気づく。そして、そのために必要なものを探索者は持っている。
この時の子どもの耐久値は18であり再生力も持っている。これ以降は「船出」の項のA-1~3を参照。
シナリオエンド
★放火エンド
【幸運】に失敗したら近隣住民の目撃情報や足跡等の痕跡から警察に追われる身となる。
翌日のニュースで2件の火災事件が報道される。1件は探索者たちが起こした深海ビルへの放火で、容疑者として山吹と【幸運】に失敗した探索者が指名手配されている。もう1件は夢国研究所の火災である。実験中の事故という可能性が挙げられるも原因は不明、遺体等は発見されなかったようだ。
※一週間経つ毎に【幸運】で判定し、失敗したら【DEX*2】で逃走判定を行う。逃走に失敗した場合は逮捕となる。放火によって8人程度の死者が出たこともあり、探索者は死刑となる。死刑執行は1d20年後とするが探索者本人も含め誰も当日までそれを知ることはない。
※安易に高跳びしようとすると判定の必要なく空港で判明し捕まる。甘く見てはいけない。
※実際にはこの段階で容疑者公開(指名手配)されないのでは?もう少しリアリティが欲しいという場合はしばらくした後に探索者が指名手配のポスターを目撃したり、嫌な視線を感じたり、突然の逮捕(あるいは任意同行)などの展開もありだろう。
逃走ルート
◆新たな潜伏先の確保
山吹たちを研究所から動かすには同程度の施設が確保しなければならない。そのためには以下の2点をクリアする必要がある。
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【幸運】【アイデア】【図書館】の中から1つを成功させ、適した場所を発見する。
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【信用】【説得】【医学】【経理】の中から1つを成功させて交渉を成立させる必要がある(この交渉相手は山吹・夢国の2人を含むので、潜伏先の施設等が無人であっても必要)。
KPが探索者の人脈やRPによって納得するならばこの判定は不要である。
◆移動
徒歩で移動可能な場所に新しい潜伏先はない。そのため車での移動が必須となる。公共の交通手段は基本的に山吹に止められるだろう。あなた方が夢国研究所から出て行ったという情報はすぐさま銀の黄昏に伝わり、あなた方を包囲する。
遭遇チェックポイントを通過する判定を6回行う。【ナビゲート】【運転】で回避できる。失敗した場合は止められてしまうので、車の耐久値を削って無理やり押し切るか、降りて戦うかを選択する。
車が壊れてしまった場合は探索者に死なない程度にダメージを与え(1d6程度)、敵にも被害を与える。遭遇したエネミーが4体なら1d4、6体なら1d6体を轢き殺した状態で戦闘開始とする。その後は徒歩での移動となり、これ以降のチェックポイントは【ナビゲート】【追跡】で判定を行う。さらに徒歩での移動は時間がかかるため、残りチェックポイント数は1.5倍となる。残りが奇数の場合に切り上げるか切り下げるかは状況に応じて決めるものとする。
また、遭遇判定で3回以上失敗すると寵愛の子は最後に控える強制エンカウント時に暴走する。
◆遭遇チェックポイント
《1〜4回目》
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車の耐久値減少:4d6
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銀の黄昏教団員×4(ステータスオール12)、拳銃×1、鉄パイプ×3
《5〜6回目》
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包囲が厳しくなってきたため、判定に-15%
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車の耐久値減少:6d6
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銀の黄昏教団員×4(ステータスオール12)、拳銃×1、鉄パイプ×3
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深きもの×2(ステータスオール13)
《強制エンカウント》
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車の耐久値減少:7d6
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銀の黄昏教団員×5(ステータスオール12)、拳銃×2、鉄パイプ×3
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深きもの×2(ステータスオール13)
※3回以上失敗していた場合
強制エンカウント時に寵愛の子が暴走する。暴走した場合はたとえ車が無事でも暴走した子どもによって破壊される。この時、遭遇した教団員は子どもによって皆殺しにされ、深きもの2体と寵愛の子との戦闘となる。
活性剤、停止剤を打ち込む判定は【こぶし】か【投擲】となる。この時、寵愛の子は海には行かず探索者を襲う。寵愛の子にとって探索者は、母親を危険に曝した人物であることに変わりはない。この戦闘の終了条件は活性剤を3本打ち込むことである。ただしイベントシーンは3本目を打ち込んだラウンドの終了時に発生するので、そのターン内に4本目を打ててしまう。つまり打ちすぎてしまうという可能性がある。船上と違いターン制限はない。
活性剤と停止剤は夢国が戦闘前に探索者に渡してくれる。夢国が死んでいた場合は車にある彼の荷物から探さなければならない。【目星】で見つけられる。山吹に任せるのであれば判定なしで2ラウンド目の彼女のターンに探索者に活性剤を渡してくれる。
この戦闘中、引き続き山吹をアイテムとして使用して1回の攻撃を肩代わりできるが、1回の攻撃力が大きいのでダメージを算出する。山吹の再生力はラウンドあたり1d10である。山吹の耐久値が0以下になってもそのラウンドの再生力で1以上になれば生存となる。耐久値が半分以上になれば立ち上がる。
また、深きものは寵愛の子が活性剤により落ち着きを取り戻すとその場から逃走する。ショゴスと化してしまった場合はその場で食われることにしてもよいだろう。
>3本打ち込んだ→船出Aを参照
>4本打ち込んだ→船出Bを参照
>寵愛の子に停止剤を打ち込んだ→船出Dを参照
-活性剤を打ちこまれ時の寵愛の子の様子-
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1本目:一度体勢を崩すがまだ襲ってくる
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2本目:その場に倒れるが、再び起き上がり暴れる。玉虫色の触手が少し元気になる。
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3本目:息はあるが、襲ってくる様子はない。玉虫色の触手が体を食べる速度が速くなる。
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4本目:体の表面がぬらぬらとした玉虫色を帯び、完全にショゴス化する。
これらを突破できれば無事に山吹たちを新たな潜伏先に送り届けることができたことになる。
シナリオエンド
決起集会~突入
探索者が昏海の会と関係を持った上で昏海の会に山吹が見つかったとの情報が伝わると、浦手か三浦に決起集会があるから来てくれと呼ばれる。深海ビルに向かうと浦手か三浦に3階へと案内される。中は蝋燭の明かり1つで、置いてあるものは祭壇に額縁で飾られた絵が1つあるのみ。浦手と8人の教団員の前で、三浦がみんなの前に立って決意を示している。その後、12分ほど全員で絵に向かって祈りを捧げる。皆で心を一つにした後、2階に行き、メンバーの内2人はショットガンを持ち、他は鉄パイプ等の棒状のものを持っていく。全ての部屋を施錠し、数台の車で目的地へと向かう。
※夢国研究所に行く前にここで教団員らを戦闘などで無力化することも可能。その場合子どもが暴走するトリガーの1つが失われるため、このままシナリオエンドでもよい。この後に中宮を山吹に会わせた場合のみ「夢国研究所」の項の「★中宮がいる場合」に進む。
夢国研究所からほど近い港で車を停め、海の方へと歩いていく。すると海の中から深きものが現れる(正気度喪失0/1d6)。深きものと合流したうえで、徒歩で研究所まで向かう。正面のガラスの壁を破壊して中に入る。入って右側にある階段にはバリケードが作られていて、山吹と1人の白衣を着た男が吹き抜けとなっている2階の廊下から薬品やらなにやらを投げようとしている。それよりもなによりも目を引くのはロビーに鎮座する玉虫色の塊である。ぬらぬらとしたそのゲル状の物体は無作為に触手を伸ばす。家具は叩き割られ、柱や壁にひびが入る。さらには前を行っていた昏海の会の人間や深きものたちが押し潰され、無数に生えた口をもって、捕まえたものをバリボリと食い散らかす。勢いを増した塊はなおも触手を伸ばして2階の廊下を破壊し、その廊下の上にいた白衣の男が落下する。さらに触手は反対側の廊下にいた山吹を捕え、あなた方にも襲い掛かる(命中25%:命中し、回避ができなかった場合は手足を拘束されて徐々に引き寄せられていく。すぐさまこれを解くためには14d6で出したショゴスのSTRに抵抗ロールで勝たねばならない)。
山吹と捕まった探索者は徐々に引き寄せられ、何十何百という数の口が間近に迫る。今まさにその肉が食われようとした瞬間、2階の壁の一画が爆発したように弾け飛んだ。そして中から飛び出してきたのは4m程の巨人だった。巨人は鋭い爪を持ち、体は不規則に生えた歪な鱗に覆われていた。体つきは深きものと似ているかもしれないが、背中には小さな蝙蝠の翼を携えており、頭部付近からは無数の目や口や鼻を持つ玉虫色の触手が伸びている。そしてその頭部自体は、目も開きっていない、幼い人間の子供のように見える。これが冒涜的な生命体でなくして何であろうか。
そのバケモノは真っ直ぐ玉虫色の塊に飛びかかり、触手をかぎ爪で切り飛ばし、捕まっていた山吹(と探索者)が吹き飛ばされる(触手に捕まっていた探索者はその勢いに吹き飛ばされて1d6のダメージを負う:【跳躍】で軽減可能)。バケモノは勢いそのままに両腕でゲル状のおぞましいものを掴み、壁に投げ飛ばし、かぎ爪で切り刻む。遂にそのゲル状のものは動かなくなった。
人間がいとも簡単に食い殺され、挙句の果てにその食い殺したおぞましいものですら生命活動を停止させる更なる脅威を目撃した探索者は正気度喪失1d10+1/3d10。
「お前らはまともな奴か」と声がする。声の方を見ると瓦礫の下敷きになった白衣の男が見える。近付いて話を聞けば彼は鞄を指さしながら「この状況をどうにかする気があるなら、そこの鞄の中にあるやつを使え。詳しい説明は省くが、アレを落ち着かせるなら活性剤を打て。打ちすぎてさっきの玉虫色の塊になったら停止剤を打て。先に停止剤なんぞ打ちやがったらここにいる奴ら…いや、この街の奴らもろとも全員死ぬからな。」と言うだろう。鞄の中を見ると活性剤、停止剤とラベルのされた注射器のようなものがそれぞれ10本ずつ入っているのがわかる。これを入手してから戦闘ラウンドとなる。
活性剤、停止剤を打ち込む判定は【こぶし】か【投擲】となる。この時、寵愛の子は海には行かず探索者を襲う。寵愛の子にとって探索者は、昏海の会と共に来た、あるいは外部から来た人間であり、そこから母の敵だという連想をしている。この戦闘の終了条件は活性剤を3本打ち込むことである。ただしイベントシーンは3本目を打ち込んだラウンドの終了時に発生するので、そのターン内に4本目を打ててしまう。つまり打ちすぎてしまうという可能性がある。船上と違いターン制限はない。
>3本打ち込んだ→船出Aを参照
>4本打ち込んだ→船出Bを参照
>寵愛の子に停止剤を打ち込んだ→船出Dを参照
-活性剤を打ちこまれ時の寵愛の子の様子-
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1本目:一度体勢を崩すがまだ襲ってくる
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2本目:その場に倒れるが、再び起き上がり暴れる。玉虫色の触手が少し元気になる。
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3本目:息はあるが、襲ってくる様子はない。玉虫色の触手が体を食べる速度が速くなる。
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4本目:体の表面がぬらぬらとした玉虫色を帯び、完全にショゴス化する。
探索者の家等に潜伏させる
前提として、この方法が取れるのは逃走ルートに行くことが前提である。そうでないと山吹たちは研究所を離れないだろう。
そして探索者が山吹たちを連れて一時的な避難所へ向かう際に【幸運】で遭遇判定をする。失敗で1d3人の昏海の会教団員に遭い、戦闘ラウンドとなる。ここで倒してしばらく他のものと連絡が取れないようにするのであれば、山吹たちが別の場所へ逃げたという情報は伝わらない。
だが、逃走による戦闘回避等で、遭遇した教団員が自由に行動可能な場合はこの目撃情報が教団全体に伝わる。そうなると夢国研究所への襲撃をやめ、再度捜索に出ることとなる。
こうなると浦手から探索者の元に連絡が入り、山吹を見ていないかといった質問の電話が来る。【交渉技能】で追究を回避できる。判定に失敗したり、電話にでなかったりすると昏海の会が探索者の探偵事務所や家などの浦手が知っていそうな場所に襲撃しにくる。
※浦手が探索者の家を知っているかどうかを事前に決めていなかった場合は1d100を振って仲の良さを決め、次のd100ロールで仲の良さの値以下の数値が出れば知っていることにしてもよいだろう。
襲撃が来た場合は扉をこじ開けられて戦闘ラウンドへと移行する。襲撃に来たエネミーに深きものはおらず、浦手と3人程度の教団員である。武器は浦手が素手、教団員1人はショットガン、残りは鉄パイプである。
この戦闘に打ち勝つ、あるいは何らかの手段で脱出しつつ新たな潜伏先へと向かうことになる。
その他
他にも考えられる道筋として関係者を装い銀の黄昏に協力を仰いだり、実験室奥にいるショゴスに活性剤を打ち全てを食わせたり、財力をもって山吹たちを国外逃亡させたり、決戦前に件の子どもに対して何かしらのアクションを起こしたりすることでシナリオを解決へと導くことができるだろう。これらの解決方法の具体的な処理は記述しないが、上述した内容を参考にしながら処理するとよいだろう。
あとがき
本シナリオは基本的に舞台を用意しているだけですのでどこに行って何を考えてその後何をするのかというのはセッションを囲む皆様次第ですので、こうしなければならいというのはありません。はじめにも書きましたが、シナリオに書かれている軌道に乗せる必要は特にありません。改変の余地も大いにあります。シティに不慣れな方には少々負担が大きいかもしれません。慣れている方にとっては当たり前のことなのですが、シナリオに書かれていないことはやってはいけないことではありません。セッションで自由にきめてよいという意味です。もっといえば書かれていることも変えてしまって問題ありません。要はセッションがよいものになればいいのです。
作者は本シナリオを書くにあたって所謂エモやしんどみ等の一切を排除したつもりです。そういう意味ではシナリオの改変などの抵抗も薄く、適当にさっくり遊びたいように遊べるのかなと思っております。キャラロールが苦手な方や、しんどいセッションが続いて心が辛い方にも箸休めの漬物感覚で楽しんでいただければ幸いです。